保険代理店におけるAI活用と多様な進化について

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執筆者船井総合研究所 インシュアランスチーム
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前回のコラムでは、生成AIで成果を出すには、AIに合わせて仕事の進め方そのものを組み替える「業務の再設計」が欠かせない、とお伝えしました。
今回は、その続きです。いざ再設計に取りかかろうとすると、多くの保険代理店が同じ場所でつまずきます。
それが、データのデジタル化です。

結論から申し上げます。どれほど優れた生成AIを導入し、理想的な業務フローを描いても、その土台となるデータがデジタル化されていなければ、AIはまったく力を発揮できません。
再設計の出発点は、ツール選びでも仕組みづくりでもなく、自社のデータを「AIが扱える状態」に整えることなのです。

AIは「読める情報」しか扱えない

生成AIは、優秀なアシスタントのようなものです。指示を出せば、要約も、文章づくりも、調べ物もこなしてくれる。
ただし、一つ条件があります。参照すべき情報が、AIの読める形でそこにある、ということです。

どれだけ優秀なアシスタントでも、必要な資料が鍵のかかった棚にしまわれていたり、ベテラン社員の頭の中にしかなかったりすれば、何も手伝えません。
生成AIもこれと同じです。AIが扱えるのは、デジタル化され、文字として読み取れる情報だけ。
紙の上や誰かの記憶の中にある情報は、AIにとっては「存在しない情報」と変わりません。

ところが、保険代理店の現場を見渡すと、大切な情報ほどデジタル化されていない、ということが少なくありません。
申込書や顧客台帳は紙のまま。面談でのやりとりは担当者の手帳や記憶の中。約款や商品資料は読み込んだだけの画像PDF。
更改の管理は担当者ごとの個人Excel。
── これでは、AIに任せたくても任せようがありません。

「この顧客に最適な提案をAIに考えさせたい」と思っても、その方の家族構成や過去の契約、これまでのやりとりが紙やExcelに散らばっていれば、AIに渡せる材料がありません。
結局、担当者が一から情報をかき集めることになり、「AIを使うほうがかえって手間」という本末転倒が起こります。

「デジタル化」には段階がある

「デジタル化」と聞くと、紙をスキャンしてPDFにすること、と考えてしまいがちです。しかし、それだけでは足りません。

たとえば、紙の資料をスキャナーで読み取った画像PDF。人の目には読めますが、AIにとっては文字の情報を持たない「ただの画像」です。これでは検索もできず、AIに内容を渡すこともできません。
必要なのは、文字(テキスト)として検索・参照できる形にすることです。

これに加えて、顧客情報や契約内容、対応履歴といったデータが、決まった項目で整理された状態ーいわゆる「構造化」された状態ーになると、AIは格段に力を発揮します。誰の・どの契約の・いつの記録なのかを、AIが正確に取り出せるからです。
こうした、AIがそのまま使えるデータのことを「AI Ready なデータ」と呼びます。

デジタル化には、紙を電子にする段階、電子を文字にする段階、文字を項目で整理する段階、という階段があります。多くの代理店は、最初の段階で止まったまま「うちはデジタル化が済んでいる」と思い込んでいます。
ここに落とし穴があります。

たとえば、顧客ごとに「契約商品・更改月・家族構成・これまでの相談内容」が同じ形式で揃っていれば、AIは「来月更改を迎える顧客のうち、見直し提案の余地が大きい人」をすぐに洗い出せます。同じ情報がバラバラのメモや個人の記憶のままでは、こうした使い方はできません。
データを整える手間は、後からこうした形で返ってきます。

なぜデジタル化が「再設計の出発点」なのか

業務フローを再設計するとは、つまるところ、仕事の一部を生成AIに任せることです。任せる相手が情報を読めなければ、どれほど見事なフローを描いても、絵に描いた餅で終わります。

たとえば「面談を録音し、AIが議事録と提案書のたたき台をつくる」という再設計。これも、過去の顧客情報や提案履歴がデジタルで参照できてはじめて、精度の高い出力になります。
土台のデータが紙のままなら、AIが返してくるのも当たり障りのない一般論どまり。
データのデジタル化は、AI活用の「準備運動」ではなく、その上にすべてを積み上げる「土台」です。
デジタル化には、もう一つ大きな意味があります。
情報の属人化を解きほぐすことです。ベテランの頭の中だけにある顧客の経緯や提案のノウハウは、その人が辞めれば一緒に失われます。
データとして残し、AIが参照できる形にしておくことは、生成AIの活用という以前に、代理店にとっての財産を守ることでもあります。

どこからデジタル化すべきか

とはいえ、社内のあらゆる情報を一度にデジタル化しようとすると、まず挫折します。手間が膨大で、現場も疲弊するからです。
だからこそ、順番が大切に多くの代理店にとって着手しやすいのは、よくある問い合わせとその回答を一覧に整理することです。
日々繰り返される照会を文字にまとめておけば、AIが一次回答案をつくる土台になり、効果も実感しやすい。いきなり全社のデータを、と気負わず、小さく始めて手応えを確かめながら広げていくのが現実的です。

多くの代理店にとって着手しやすいのは、よくある問い合わせとその回答を一覧に整理することです。
日々繰り返される照会を文字にまとめておけば、AIが一次回答案をつくる土台になり、効果も実感しやすい。
いきなり全社のデータを、と気負わず、小さく始めて手応えを確かめながら広げていくのが現実的です。

経営者がまず着手すべきこと最初の一歩は、大がかりなシステム投資ではありません。

自社の大切な情報が、いま「どこに・どんな形で」眠っているかを棚卸しすることです。紙の書類か、個人のパソコンの中か、それとも社員の記憶の中か。
書き出してみると、想像以上に多くの情報が、AIには手の届かない場所にあると気づくはずです。

データのデジタル化は、地味で手間のかかる作業です。
華やかなAIツールに比べれば、つい後回しにしたくなる。しかし、ここを飛ばして最新ツールに飛びついた代理店ほど、「思ったほど使えない」という壁にぶつかります。
遠回りに見えますが、足元のデータを整えておくことが、結局は生成AIの効果をいちばん引き出します。

執筆者 : 船井総合研究所 インシュアランスチーム

船井総研のインシュアランスチームによる経営コンサルティングは、全国の成功事例を武器に、変化する保険業界において「業績向上」と「永続経営」の両立を支援する専門家集団です。営業中心の組織から「経営中心の組織」へのシフトや、デジタル活用・人財採用など、次世代の保険代理店・FP事務所が抱える課題を即座に解決いたします。